


美容師が売上を
上げるために技術と同等、
いや、それ以上に必要な能力。
それは、会話力だ。
サロンの売上を
飛躍的に上げる
「カウンセリング会話術」
ある繁盛サロンのオーナーは、トップスタイリストだった
現役時代の苦い経験を遠くを見るように語り出した

まだ美容師になりたての頃から、技術には自信がありました。
コンテストがあれば、可能な限り参戦しましたし、入賞する率も高かった。
優勝させてもらったことも何度かありましたし、海外の大会でも賞をいただきました。
自分で言うのもなんですが、全店でスタイリストが50名ちかくいる中で、私が一番上手かったと、今でもそう思っています。

当然、売上に関しても、社内で常にトップ争いをしていましたが、独立するまでの10数年間、私と同期の女性スタイリストには一度も勝てませんでした。
こんな言い方はよくありませんが、私から見て彼女は技術者としては、はっきり言ってヘタクソでした。
私は当時、彼女のお客様は「気の毒だな」とさえ思っていました。
しかし、彼女の予約表は平日でも朝一番から受付終了時間までびっしり埋まっていました。
彼女が担当するお客様は皆、なかなか予約がとれないこともあって、競うように次回予約を入れて帰りました。
そんな彼女が施術するセット面からは、いつもお客様の楽しそうな笑い声が絶えませんでした。
とは言え、彼女の話術がとりわけ面白いわけでもない。
会話の割合で言うなら、ほぼ9割、ほとんどお客様が笑顔でおしゃべりしているのを、彼女は適当に相づちをうちながら、ハサミを動かしていました。
私はそれが不思議でならなかった。

連日、このような光景を見て、どうすれば、こうも多くのお客様をこんなに楽しい気分にさせられるのか?
機会があれば彼女と隣のセット面に陣取り、施術をしながら聞き耳を立てたり、いろいろ観察もしたりしました。
しかし、これだという方法論を見いだせないまま、やがて、それは彼女が持ち合わせた、
「天性の対人センス」によるものだと、自分の中で結論づけるようになりました。
同期という身近な存在に、そのような人材がいたこともあって、私は高い技術をもっていても、それと売上額の高さは必ずしも比例しない。
高い売上を作ることにおいて、技術力よりむしろ重要なのはコミュニケーション力であると・・・。
技術には自信があった私だけに、抵抗感はありましたが、やがて、そのように考えるようになりました。
